息子の喜ぶ顔が見たくて繰り返す借金

3年前、息子さんが5歳の時に奥さまと離婚。離婚のきっかけはご自身の不貞行為だったそうです。

離婚条件は月々5万円の養育費を支払うことで、予定通り養育費を支払っていれば月に1度息子さんとの面会を条件に離婚に踏み切りました。

日々の楽しみもあまりなく、唯一の娯楽は息子との面会。しかし、生活しながら毎月の養育費を支払うのは容易なことではありませんでした。

今回は息子との面会のために消費者金融からの借金を繰り返し、さらには個人融資を利用してしまったサトシさんに取材協力いただきました。

彼を待ち受けていた未来は、息子とは無事面会を続けられたのか、ぜひ最後までご覧ください。

家族3人での生活と自身の不貞行為

妻・息子との生活

元々給料が多い方ではなかったんです。妻・息子と暮らしていた時も一生懸命節約してくれていたんだと思います。

妻も働いてくれていましたが、息子もまだ保育園で手がかかる時期でしたし、僕とも話し合ってパート勤務してもらっていました。

妻の勤務先ですか？近くのスーパーです。もし息子になにかあってもすぐ対応できるように、と妻が気を利かせてくれました。

なのに、僕が悪かったんです。職場の派遣社員と…。

派遣社員との不倫

新しく派遣されてきた女性は20代でした。明るく元気で、最初の印象は若いなあ、という感じでした。

中途社員の入社と時期が被っていたので歓迎会をすることになったんです。新規案件が決まって、僕がリーダーを務めていたこともあって歓迎会の幹事を任されました。

いくつか候補を上げてみんなに多数決で決めてもらいました。そしたら彼女に話しかけられたんです。「サトシさんってみんなに平等で優しいんですね」って。

彼女からすればなんてことない一言だったんだと思います。でも、当時妻とは息子のことでケンカが絶えず、女性から優しい言葉をかけられたのは久しぶりのことでした。

歓迎会は予定通り行われて3次会まで行われました。会社の飲み会としては結構長いですよね。もちろん先に帰った人もいるし、2次会で帰った人も。

でも、彼女は最後まで残っていたんです。

さて帰ろうという時、同じ方向の人たちでタクシーを乗り合わせたんですが、僕と彼女の言えは方向が同じだったんです。

彼女の自宅の方が遠いようだったので、先に寄ってもらうよう運転手に伝えたら、コーヒーでもどうかと誘われました。

一人暮らしとのことだったので断ろうとしたんですが、酔いも回って喉も乾いていて。あまりに酒臭いと妻にも嫌な顔をされる気がしたんで、つい寄ってしまいました。

それがダメだったんだと思います。

彼女の自宅を出た時には始発が動き出している時間でした。

複数回に渡る派遣社員との密会

それから1年くらいでしょうか。彼女との関係は続いていました。

会社の飲み会や取引先との会食があると言って彼女と会っていたんです。基本的には彼女の家に行くことが多かったですが、ある時映画館で映画を観たいと言われて出かけました。

その時流行っていた韓国アクションです。韓国の映画って結構迫力もあって面白くて僕もハマっていたんです。

映画を観た後はご飯を食べて、普段は行かないラブホテルに行きました。

写真を撮られているとも知らずに。

妻はずっと前から気が付いていたんでしょうね。その日僕は興信所の人にずっとつけられていたみたいでした。

映画を観終わった後手をつないでいるところも写真で見せられました。

僕は妻に離婚を切り出されました。

妻との離婚、派遣社員との破局

離婚と面会

妻に言い返す言葉も見つからず、とにかく謝ることしかできませんでした。離婚条件を提案され、言われるがままYESと答えました。

息子の親権は妻、養育費は月5万円ということでしたが、約束を守っているうちは月に1度息子に面会できるという条件でした。

面会だけが楽しみでしたね。

会社にもバレる不貞行為

派遣社員ですか？その後、会社にも僕達の関係がバレて。もう出社できないと言って彼女は退社しました。

僕はみんなから白い目で見られていましたが、仕事を辞めるわけにもいかず。今でも肩身が狭い思いをしながら出勤しています。

簡単に働き口を探せるほど僕に取り得はありませんから。

滞る養育費の支払いと消費者金融からの借金

とにかく我武者羅に働きました。でも、やっぱり毎月5万円の養育費を支払うのは簡単なことではなんくて。

不倫がバレてから、給料も上がっていなくて。断ったんです。せっかく採用した派遣社員もいなくなって、会社にも迷惑をかけましたから。

本当は生活が苦しかったけど、そうでもしないと僕の気持ちも納まらないし、なによりこれ以上白い目で見られるのもきつかったので。

養育費支払いのために借りる消費者金融

会社にも誰にも言えなくて、初めて消費者金融を利用しました。前年度の源泉徴収票を送ってからものの5分ほどで振り込まれていたのにはビックリしました。

借金をするってとても大事に思っていたけど、こんなに早くお金が手に入るなんて、少し気が大きくなったのを覚えています。

限度額ギリギリまで借りて、息子との面会の時おもちゃやや野球グッズをプレゼントしました。息子の将来の夢は野球選手だったんです。

欲しいものをプレゼントすると本当に嬉しそうに笑ってくれて。嬉しかったなあ。

心の底か生きがいを感じました。

それからは常に限度額まで借りるようになりました。養育費の支払いとプレゼントのために。

返済できない借金とブラックリスト

でも、そんな生活は長く続きませんでした。借金が返済できなくなったんです。

ブラックリストっていうんですか？遂に借金の申し込みができなくなって、養育費の支払いも難しくなっていったんです。

息子との面会が拒否されるように

養育費が払えなくて、息子との面会を断られるようになりました。

僕は生きがいを失ってしまったんです。息子の笑顔が見たくて借金をしていたら、面会すらできなくなるなんて考えてもいませんでした。

滞った養育費を払ってまた面会をお願いするには、もう個人融資しかなかったんです。

養育費支払いのためにネットで見つけた個人融資を利用する

藁にもすがる思いで個人融資に申し込みました。面会できるならなんでもよかったんです。

滞納していた養育費を払って、無事息子との面会も再開しました。でも、これが地獄の始まりでした。

返済できないほど高額な利息

消費者金融があれこれ定めているのって理由があるんですね。個人融資みたいな違法業者は上限もルールもないから、利息が驚くほど高かったです。

返済できるはずもなく、僕はどんどん借金を重ねました。

息子との面会中に行われる取り立て

取り立ても結構頻繁で、せっかく息子と面会している時にも何度も電話が来ました。

あまりにも電話が鳴るから息子も不思議そうにしていて。このまま放置するわけにもいかず、少しの間遊べるようにお金を渡してゲームセンターで折り返したんです。

電話口の怒鳴り声はいろいろな音がしているゲームセンターでも目立つほどでした。気が付いた時には息子が隣に戻っていて、目に涙を貯めながら「怖い」って言われたんです。

その日、息子を送り届けた後妻から電話が来ました。

離婚した妻からの勧めで弁護士に相談することに

息子が元妻に話したみたいで、すぐに電話が来ました。息子も心配しているから、弁護士に相談しようって。

まさか離婚した妻に助けられるとは思ってもみませんでした。

いや、僕を助けてくれたのは元妻と息子。2人ですね。僕は2人に救われたんです。

初回料無料の弁護士に問い合わせる

どこに相談すればいいかわからなくて、初回相談料無料と謳っている弁護士事務所に問い合わせました。

調べると、こういったトラブルは司法書士に相談するのもいいみたいですね。でも、僕の場合は借金が140万円を超えていましたから。

高額な場合は弁護士に相談するのがいいらしいです。

相談費用なんて払えるはずもなかったので、初回無料には助かりましたね。その日財布に入っていた現金は1000円札1枚でした。

翌日には取り立てストップ

息子にもバレるくらい鳴り続いていた取り立ては、次の日にピタッと止まりました。よく即日解決なんて言いますけど、本当でした。

個人融資の他にも消費者金融から借りていたので、多重債務ってことで全てまとめて解決してもらいました。

今はまだ新しいクレジットカードが作れませんが、前みたいに取り立ての電話がバンバン鳴ることもなくなりました。

「息子ですか？今でも月に1度会っていますよ。今日もこの後会う約束をしています。」

「あ、見えますか？信号の向こうで手を振っているのが僕の息子です。」

そう話すサトシさんは、もう息子さんのことをお金でつなぎとめる必要はない。

プレゼントでなく、心でつながることができたからだ。

離婚した妻と別居した息子に救われた先に待っていたもの

サトシさんはあれから借金をすることもなく、債務整理した借金をコツコツ返し続けている。

少々自己中心的で深く考えない性格の彼だが、息子さん・元奥さまに助けられたことで今後借金問題を抱える可能性は少ないだろう。

実は、今回取材にご協力いただいたサトシさんのように工場で働く人が多重債務で自死を選ぶケースは少なくない。

引用元：金融庁 / 消費者庁 / 厚生労働省（自殺対策推進室） / 法務省（2024年10月9日）

これは2023年のデータだが、この年、工場勤務で多重債務を理由とした自殺は48人に及んだ。サトシさんもまた、他人事ではないだろう。

異変に気付き、良き方向へ手助けしてくれた息子さん。そのサインをすぐ行動に移してくれた元奥さまの存在あってのことだろう。

人はいつどこで、何がきっかけで借金に溺れるか判断することは容易ではない。海底に沈んでしまえば、自身が借金の海の中にいることにすら気が付けないだろう。

だからぜひ、人に相談するということだけは覚えておいていただきたい。